首都圏 駅の整備強行 商店4400軒を取り壊す ホーム拡張、駐車場確保 国鉄
国鉄は首都圏鉄道網を拡充し、各駅の整備を急ピッチで進めている。6月導入予定の課金式電子切符に始まり、運行する全車両にエアコンを完備。首都圏全63駅のプラットホームを拡張し、乗客用の駐車場スペースなども確保する計画だが、国鉄保有地の駅構内や周辺に店を構えていた市民らが反発し、治安部隊と衝突する騒動が続発している。
国鉄は首都圏の線路の複線化を進め、現在1日550万〜600万人が鉄道を利用する。2018年までの5年間に現在の2倍以上となる1200万人の利用者を目指し、サービスや設備の質向上を図っている。
来年には、バンテン州のスカルノハッタ空港と西ジャカルタに接するポリス駅を結ぶ路線を開設するなど鉄道網も拡充。これまで均一だった運賃を廃止し、区間制を採用、自動改札機を利用する電子切符を6月から導入する。
駅の改築や周辺の整備も進め、駅敷地内の商店を撤去し、プラットホームの拡張にも着手している。国鉄のマテタ・リザルルハック広報担当は「危ない、汚いと批判されてきた鉄道だが、渋滞が深刻化する首都圏の第一の交通手段を目指す」と話す。
■暴力集団が不法徴収
一方で、駅整備を強行する国鉄に対する反発が相次いでいる。
国鉄は15日以降、南ジャカルタ・テベット駅、同パサールミング駅、中央ジャカルタ・ジュアンダ駅の商店を撤去。27日には西ジャカルタ・ドゥリ駅で衝突が発生したが、28日、南ジャカルタ・レンテンアグン駅で続けられた。これまで首都圏計63駅のうち56駅で取り壊された商店は約4400軒に上った。
ドゥリ駅にあったハムザさん(40)の店は27日、がれきの山に埋もれた。土地は国鉄から借りていたものの、店は2500万ルピアかけて建てた。「サービス向上はいいが、納得できる解決策を提示してほしい」と声を張り上げる。
国鉄は解決策として商店主に他の場所を提供したり、示談金を払ったりしたとしているが、ハムザさんが提示されたのは2年先に作られる予定の市場への移転。「国鉄の解決策というのは詭弁(きべん)だ」と批判した。
商店主を支援する法律擁護協会のハンディカ・フェブリアン弁護士によると、駅長が個人的に国鉄保有地を商店に貸し出し、店主が合法的に土地を借りていたと思い込むことも多い。暴力集団など第三者が場所代を取り立ててきた駅もあり、国鉄各駅によって対応が異なることも問題を複雑にしているという。
ハンディカ氏は「鉄道改革が本格化し、すべてを整備する必要性に迫られている。これに対する商店主らの不満が一気に噴き出した」と指摘。ドゥリ駅のように暴力集団が国鉄職員と商店主の衝突をあおり、騒ぎが拡大する駅も出ており、国鉄が商店主らから同意を取り付けなければ対立は激化すると警告した。(上松亮介、写真も)