来年10月まで延長へ 森林伐採の凍結措置 業界反発、課題残る
世界有数の森林面積を誇るインドネシアで、今月20日に期限が切れる森林開発の凍結措置(モラトリアム)の延長が確実視されている。2011年から2年間のモラトリアムで森林伐採面積が減少したとして、政府は延長を政府の温室効果ガス削減目標の達成につなげる意向だが、パーム油業界などが反発している。森林許可の管理や他の林業政策との矛盾などの課題も依然残っている。
凍結措置は2011年の大統領通達第10号で定められ、計6520ヘクタールの未開発の天然林と泥炭地を2年間、開発禁止区域に指定し、森林減少の防止と温暖化ガス削減を目指すもの。インドネシアの森林保護政策へ10億ドルの資金援助を約束したノルウェー政府とインドネシア政府との2カ国間協定が土台となった。
アグス・プルノモ大統領補佐官(気候変動担当)によると、すでに新たな大統領通達で延長する準備を進めており、期限前に延長を発表する予定だ。ただ、延長はユドヨノ大統領の任期が満了する14年10月までのため、それ以降は次期大統領が決定する。
ズルキフリ・ハサン林業相は、10〜11年に減少した森林面積は年間450ヘクタールにとどまり、1999〜2002年の同350万ヘクタールから大きく削減されたため、モラトリアム実施は政府の森林保護政策の成功例だと強調。延長によって20年までに温室効果ガスの排出量を26%削減するという政府目標の達成につなげたいとの見解を示している。
■産業振興政策と矛盾
原生林や泥炭地を活用して世界最大の産出国となったパーム油業界は反発している。670万人の雇用創出や、06〜12年に31億ドルの政府の歳入増に貢献したことなどを挙げ、延長に反対の姿勢を表明。20年までにパーム油生産を年間4千万トンに引き上げる政府姿勢と矛盾するとして、11年の実施以前からモラトリアムを批判していた。
パーム油生産者組合(ガプキ)は、過去2年間のモラトリアムで森林伐採や二酸化炭素の排出が十分に抑制されており、今回の延長はパーム油の増産の障害になるだけだとして、政府は泥炭地のパーム油農園としての利用を阻害するべきでないと主張している。
■利用許可の管理徹底
一方、環境団体らはモラトリアムの延長を歓迎しつつも、対象面積の拡大など政府にさらなる取り組みを求めていく構えだ。世界資源研究機関(WRI)はモラトリアム実施が温室効果ガスの削減に一定の成果を出したとしつつも、政府目標を達成するためには、延長に加えて、モラトリアムの対象となる森林をマングローブ林や二次林へも拡大すべきだとしている。
ボゴールに事務所を置く国際森林研究センターのダニエル・ムルディヤルソ研究員は、同センターの今年の調査で、モラトリアムの対象であるはずの泥炭地500万ヘクタールに利用許可が発行されたことが明らかになったとし、森林利用許可の管理を問題視。中央政府が主導して問題解決すべきとの見解を示した。
低迷する林業の活性化と矛盾するとの批判も出ている。国内で1立方メートル当たり30ドルで取引される丸太の価格は、国際相場では80ドル前後と2倍以上の価格のため、政府は01年に導入した丸太の輸出禁止解除を検討しているが、対象となる産業用林(HTI)だけでなく、凍結地域での違法伐採を助長すると環境団体などが訴えている。(宮平麻里子)