「外に出ろ!」 乗客はパニックに 邦人「テロかと思った」
墜落事故が起きたングラライ国際空港はコバルトブルーの海に突き出ている。「楽園」到着直前、着陸態勢に入った機体が着水した。「外に出ろ!」。パニックに陥った乗客たちは非常口に殺到した。
乗客のデウィさんは、地元メディアに対し「突然、飛行機が海に迫った。大きな音とともに水に落ちた」と話した。機長が着陸態勢に入ることを伝え、降機の準備を始めようとしたところだった。乗務員からの注意喚起もなかった。「全ての乗客がパニック状態で叫んでいた。ライフジャケットの着用を試み、非常口に殺到していた」。事故機から脱出後、デウィさんは自ら泳いで海岸までたどり着いたという。
乗客の60歳の女性は「私には体を動かす力がなかった。弱り切って、おびえるしかなかった」。機長と副機長にライフジャケットを装着してもらい、サーフボードで海岸まで運ばれた。軍、救命救助隊(SAR)に加え、地元の漁師らが救助にあたった。
観光客でにぎわうングラライ空港。離着陸が中断されたのは90分ほど。その後は到着、出発ゲートとも何事もなかったように大勢の人たちで混雑していた。事故直後、メダンからバリに戻る家族を迎えに来た邦人女性は「空港に行く途中、けたたましい音を立てて救急車やパトカーが追い越して行った。またどこかでテロが起こったのかと思いぞっとした。飛行機事故とは想像もしなかった」と話した。
価格の安さと便の多さでジャカルタ出張の際はいつもライオンエアを利用しているというインドネシア人男性は「最近はあまり遅れることもなく、頼りにしていたが、次回は少々高くてもガルーダにしようと思う」と困惑気味に話した。
事故発生直後から、中央ジャカルタのライオンエアには約100人の報道陣が詰めかけた。事故発生から約4時間後にようやく会見したエドワード・シライット取締役は、事故原因について矢継ぎ早に飛ぶ質問にも「現段階でその質問に応えられない」と述べるにとどまった。同社は同日、本社のほか、バリとバンドンの両空港内に緊急援護拠点を設け、乗客の情報収集や家族との連絡にあたった。乗客への補償を検討しているという。(北井香織、道下健弘)