心惹かれる作品に出会うため 美術館と図書館を探検 芸術の秋
インドネシアに来る前、インドネシアの伝統芸術文化は世界的にも素晴らしいものだが、絵画芸術は富んでいないと思い落ち込んでいた。だが、私の予想は街を歩くだけで覆されることとなった。駅や街の壁各所にストリートアートがちりばめられているではないか。インドネシアの芸術に触れたいと考え、ジャカルタ内の美術館や図書館探検を試みた。
心惹かれ、その絵画の前から足を動かせない作品に出会いたくて美術館へ訪れる。画材がない時代に壁を利用した壁画。宗教を広め、伝えるために描かれた宗教画。写真が未誕生の頃、人や建物を正確に描くことを求められた絵画。写真が誕生し、芸術に正確性を求められることに疑問を持った画家が、目と心が感じるままに自由な作品を描き始めた。そして、現代美術では鑑賞者の捉え方に作品のテーマを委ねられているような気がする。
また、絵画の楽しみ方も変わってきたようで、昔は権力や富の誇示として扱われていた絵画が、部屋やオフィスなどの空間を彩るものへと変わり、今では自らを彩どるものへと変化したように感じる。よく美術館で「鑑賞者+絵画」で写真を撮っている人を見かける。
高校生くらいの時は、美術館へ訪れるには知識がないと入れないのではと敷居の高さを感じていたが、絵画作品の前でパシャパシャと決めポーズで写真を撮る若い子を目にすると、各々の楽しみ方で芸術を楽しめば良いじゃないかと励まされる。新しい芸術の楽しみ方により、鑑賞者が増えることで様々な芸術イベントが開催されることは願ったり叶ったりだ。
「え、こんな入り組んだ場所に本当に絵画があるの?」と独り言をこぼしながら訪れた中央ジャカルタのJIエキスポに近い「Art:1 New Museum」の展示会では、色鮮やかな芸術作品がずらりと並んでいた。
また、8月26~28日に、中央ジャカルタ・スナヤンのジャカルタ・コンベティションセンター(JCC)で3年ぶりに開催された国内最大級の現代アートイベント「アート・ジャカルタ」では、初日から多くの鑑賞者が訪れた。大阪から来イした画廊経営者は「日本からも3~4ギャラリーほどが参加しているはず。インドネシアは若い芸術家が勢いを持っていて、力強い作品を描く」と語った。
西ジャカルタ・クボンジュルックのヌサンタラ近現代美術館(MACAN)では、草間彌生や村上隆、奈良美智といった現代アートの巨匠作品も展示されており、日本人の作品が好まれていることに勝手に誇らしさを感じた。さらに同美術館では11月26日から日本で入場者数67万人を記録した塩田千春展が開催されることが決まり、今から待ち遠しい気持ちでいっぱいだ。
美術館だけでなく、7月にリニューアルオープンした中央ジャカルタのチキニ公立図書館へも足を運んだ。図書館へたどり着くためのエレベーターが壁の色と同化していて、見つけるのに苦戦したが、秘密基地のようでわくわくした。内装も木の暖かさとコンクリートの冷たさが融合していて最高の空間だった。また、キッズスペースもあり、子どもが大きな声や音を出しても他エリアへは全く響かない作りとなっていた。
図書館へ入るには住民登録証(KTP)かパスポートの入力が必要だが、スタッフが助けてくれる。入館時には貴重品以外の荷物はロッカーへ預け、飲食物の持ち込みは厳禁だった。
アートで溢れたジャカルタを知れた探検となった。(青山桃花、写真も)