【インドネシア投資レビュー】 チャンスはある インドネシア投資レビュー

 インドネシアの発展に日本は深く関わってきた。最大の政府開発援助 (ODA)供与国としての立場から、近年は経済分野をはじめアジアにおける戦略的パートナーとして緊密な関係を築いている。改めて、日本企業の投資やビジネス動向を振り返ってみたい。

 2017年の外国の直接投資統計によると、全体の430兆5千億ルピアのうち、日本は50億ドルでシンガポールに次ぐ2位。依然として高い存在感を示している。一方で、近年は四輪やインフラ分野を中心に中国からの投資も目立つ。
 日本からの投資熱は落ち着いてきている感がある。しかし、1960年代から繊維や二輪、四輪、家電などの多岐にわたる分野で先人が築き上げてきた土台がこの地にはある。
 既存産業を発達させるような分野や、人々の暮らしが豊かになるような領域への投資が求められており、そこにビジネスチャンスがあるのではないだろうか。
 国の発展には底堅い個人消費に対応するような産業も重要だ。ただ一方で、消費に引っ張られている構造から脱却し、好調な経済のファンダメンタルズを維持していくためには社会資本を整備して、投資がけん引する体制になっていくことも必要だろう。
 江戸時代に全国で活躍した近江商人の基本理念に「売り手よし・買い手よし・世間よし」という精神があり、現在にも生きるビジネスへの向き合い方だ。この理念を実践できるような投資のあり方を考えたい。(平野慧)


最高の組み合わせ SMEJ 日系中小とイ輸出産業

 インドネシアに進出する日系企業で最も高い割合を占めるのが中小企業。その企業間の情報交換やサポートを行うのが中小企業連合会(SMEJ)。インドシア歴37年、七つの会社を立ち上げた白石康信SMEJ会長に、インドネシアの中小企業を取り巻く環境や問題点、今後展開するメリットについて聞いた。

 ――最近の経済状況は。
 明るさは見えているといわれるが、それが実感できないというのが現状。マクロ経済指標で、成長率5%の安定した状況といわれるが、中小企業からは厳しい悲鳴が聞こえてくる。国内総生産(GDP)の60%といわれる個人消費が伸びず、市場が拡大しない。市場縮小傾向の中で、完成車メーカー、1次下請け工場などがコスト削減のため内製化を進め、その下請けの仕事は減少している。利益が出ず、不況感、閉塞感が漂い、撤退と言う話も聞こえくる。
 ――最近の投資環境は。
 決して改善しているとは思わない。まず交通渋滞。渋滞による経済損失を考えると、どれだけの投資家が、投資を前向きに考えるのか、疑問に思う。道路は人間でいうところの大動脈で、流れず詰まった状態が続けば死んでしまう。この国の経済も危機的な状況になるのではと心配する。政府の強いリーダーシップを持って対応して欲しい。
 次に、最低資本金規制や外国人就労許可の厳格化。国内の企業や雇用を守るためと言われるが、決してインドネシアにとってプラスにならないと思う。中小企業でも積極的に投資が行われることで、新しい雇用が生まれ、ビジネスの展開が広がる。管理職や高度な技術を持った外国人が働くことで、技術を学び仕事の幅が広がる。私は、インドネシアには、勤勉で優秀な人材が多いと感じている。人々がもっと自信を持ち、政府ももっと人材を信用して、国の発展のために何がプラスになるのか考えて欲しい。
 ――中小企業が展開するメリットは。
 最低賃金の上昇で魅力は薄れてきているといわれるが、やはり、労働集約的な産業が展開できる国であるということ。2億5千万の人口で、新規就労者人口は毎年200万人に上り、成長率が7%以上ないと吸収できないといわれる。ポテンシャルのある大きな市場に加え、インドネシア政府は、今後輸出に力を入れていくとしている。他国の製品と戦う輸出市場では、高度な技術に裏打ちされた質の高い製品が求められる。日本の製造業を支えてきた中小企業の技術やノウハウは、インドネシアの輸出展開において、世界の市場で競争に勝つ製品を作るために必ずプラスになる。若年層の失業率が高いといわれ、雇用の吸収を必要とするインドネシアと、高齢化、少子化によって今までの技術を生かせなくなる日本の製造業は、相互に生き残り、発展していくための最高の組み合わせだと思う。

白石康信会長

 しらいし・やすのぶ 57年愛媛県立新居浜工業高校卒、三菱電機入社。京都製作所、本社海外事業本部を経て78年シンガポールに赴任。81年リポーグループと三菱電機の合弁「リッポー・メルコ・インドネシア」設立のためインドネシア赴任。99年三菱電機定年退職。菱栄電機取締役。インドネシアでリョーエイ・エテルナなど7社の設立に関わる。09年米国バークレー大学より経営哲学名誉博士号授与。現在、GSPE社取締役、中小企業連合会(SMEJ)会長。愛媛県今治市生まれ。79歳。


勢いあるデジタル産業 ジェトロ 共に開拓を

 2020年までに電子商取引(EC)年間取引額1300億ドルという目標を掲げるインドネシア。競争の激しいEC業界について、日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所の春日原大樹所長は「誰かがプラットフォームを独占するより、(ECを)共有財産的に捉え、一緒に開拓していく形が理想的だろう」と話す。また、ビッグデータ関連ビジネスなどの国内への参入について、「中国などは勢いがある。日本も今後、人材を送り込んだり、人材のローカル化を進めたりしなければ」と指摘した。
 デジタル経済にはジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領も熱い視線を注ぐ。デジタル社会とともに政府が力を入れるのが、再生可能エネルギー事業だ。政府は国営電力PLNを通じた電力買い取り制度などで推進を図っているが、春日原所長は「制度的に不十分で、不明瞭な点も多い」と現状を見る。「制度の整備と同時に、発電所を運営、整備する地元の人の教育に力を入れれば、ポテンシャルを発揮できるだろう」と話した。
 伸び悩んでいるといわれる個人消費については「中間層が育っていかない限りは個人消費も劇的には伸びない」とし、今後はインフラ整備の先を見据えた産業や雇用を育む必要性があるとした。また、中間層を伸ばし、経済発展を続けるためには産業構造の構築が必要と指摘。「人材育成やものづくり、仕事づくりの分野で(ジェトロとして)日本とのコラボを進めていきたい」と語った。

■選択と集中が課題 

 政府は外国投資や隠れた国内投資を引き出して経済を活性化、消費の盛り上げを図る。一方で、どの産業をどう伸ばしたいのか、どう雇用を生み出したいのか、といった政府のメッセージ性が薄く、投資の評価についても金額ばかりが重視され、「質や中身への関心が薄い」と春日原所長は指摘する。
 ベトナムがIT産業に特化した税免除や人材育成をアピールし、投資呼び込みに成功している例を挙げ、どんな産業を育てるための投資を呼び込みたいのか、ターゲットを絞り、規制の撤廃や人材育成などを徹底的に実施するなど「(投資呼び込みには)選択と集中が必要」と話した。(坂田優菜、写真も)

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