【メラ・プティ】政治の季節は利権の季節 (2018年02月12日)

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 ここ数年、ジャカルタの政治をにぎわせている話題のひとつが湾岸の埋め立てと人工島の建設である。推進派のアホック元州知事が、去年の州知事選挙で敗北し、宗教冒とく罪で禁固2年の判決を受け、収監の身となったのは記憶に新しい。選挙に勝ったアニス現知事は、さっそく人工島建設の中止を唱えている。とはいえ、すでに進んでいるのをどう止めるのか。イケイケ推進派が多い中央政府は、アニス無視の姿勢を貫いている。
 あまり外国人の関心事にはなりにくいが、この埋め立てと人工島は、実はインドネシア各地でいまブームだ。よく知られている場所だけでも、ジャカルタ以外に13カ所、一説では49カ所で建設ラッシュとなっている。バリ州のベノア湾や東カリマンタン州のバリックパパン湾、スラウェシ島のマカッサルやパルやマナドの海岸、マルク州のアンボン湾などなど。ジャカルタを含めて14カ所の埋め立て総面積は2万ヘクタールを超える。つまり東京ドーム4千個くらいだ。
 なぜ埋め立て人工島がこれほどはやるのか。この巨大プロジェクトにあふれんばかりの「うまみ」があるからである。特にことしの全国地方首長選挙や、来年の議会選挙への出馬を準備している現職政治家の人たちにとって、このプロジェクトの許認可は、選挙資金の調達に直結する。ジャカルタでも州議会の開発委員会の委員長が逮捕されているが、各地で許認可をめぐって賄賂マネーが飛び交っており、金権政治の温床と化している。「政治の季節」の到来は、「利権の季節」の訪れともいえよう。
 ただ、埋め立てと人工島は政治を超えた大きなインパクトを持つ。ジャカルタの大手デベロッパーが、各地の湾岸埋め立て事業を行うケースが多いが、典型的に問題となるのが、環境アセスメントの無視、海洋水質悪化、漁民の生活困窮化、公共圏の私有化、住民立ち退きなどである。各地で海という公共の空間が、ウオーターフロント商業施設のための人工島となり私有化され、お金持ちしか立ち寄れない場所になっていく。また、湾を埋め立てるので、湾内の水質は悪化して漁獲高も減る。湾の外に出て漁をせざるを得ず、小型漁船の燃料コストも一気に跳ね上がる。湾内に水がたまることで水位も上昇し、岸沿いの家々は浸水の脅威におびえる。
 こういう状況は、「政治の季節」の犠牲として、私たちの見えないところで日々深刻度を増している。(立命館大学国際関係学部教授)

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