漁村撤去跡に仮設住宅 アニス知事の公約、沿岸整備は不透明 北ジャカルタ区アクアリウム村

 アニス・バスウェダン知事が選挙戦で不法住居撤去地区の再生を掲げた北ジャカルタ区パサールイカンの漁村で、仮設住宅の建設が始まった。テント暮らしを強いられてきた住民は従来の生活を取り戻そうと明るい表情を浮かべる。だが、沿岸の密集地や観光地の再整備計画は不透明のままで、今後知事の手腕が問われそうだ。
 オランダ統治時代から交易拠点として栄えたスンダクラパ港の対岸にあるのが、北ジャカルタ区プンジャリンガン郡プンジャリンガン村のアクアリウム村。アホック元知事が2016年4月、不法占拠として港湾に面する密集地の住居を一斉撤去した漁村だ。撤去後はがれきが山積し、居座り続ける住民が小屋を建てるなどしていた。ここで17年末から仮設住宅128戸の建設が始まっている。
 住民代表として州政府と月1度、仮設住宅建設について協議しているダルマ・ディアニさん(41)は12日、じゃかるた新聞の取材に「(知事が代わり)撤去される恐れがなくなり安心している。自身が生まれた場所でまたきちんと暮らすことができる」と、生き生きした表情を見せる。
 仮設住宅は、居座った住民が建てた小屋を取り壊した跡地に3ブロック、全112世帯分128ユニットを建設する計画。台所付きの1ユニット(広さ3・5×6メートル)を1世帯が使用する。1度に16人が利用できるトイレや水浴び場は共有で3カ所に建てる。
 プンジャリンガン村のデピカ・ロマディ村長(35)によると、アクアリウム村には現在112世帯、約500〜600人が暮らす。建設費には州予算150億ルピアが拠出され、国営建設ジャヤ・コンストルクシが請け負っている。
 先に建設が始まった107ユニットは3月に完成予定。デピカ村長は「今後、隣組(RT)や町内会(RW)区分がなくなり、無効になっていた住民登録証(KTP)を再度使えるようにする」と説明。KTPがなくて職探しもできず社会保障なども受けられない状態が続いていたという。
 アクアリウム村は、緑地公園を整備し国際観光地とするため、アホック元知事が海洋博物館やジャカルタ最古のモスクの一つ、ルアル・バタン・モスク、魚市場、スンダクラパ港周辺の住宅密集地計5万6千平方メートルを5地区に分け、強制撤去を断行した地域にある。
 アホック氏に反発した住民たちを取り込もうと、アニス氏は洪水多発地域の東ジャカルタ区ブキット・ドゥリとともにアクアリウム村の再生計画を公約に掲げ、住民支援を続けてきた。アクアリウム村や周辺の再生計画について、国際観光地と住宅地の整備は同時進行が可能としているが、現時点でアホック元知事が目指した緑地公園の整備は中断されている。アニス知事は地域の特色に合わせた再生計画を柔軟に進める考えを示しており、具体案が待たれている。(中島昭浩、写真も)

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