LRT延伸、露天商許可 タナアバン再開発案 「新しい駅」に期待も

 東南アジア最大の繊維市場、中央ジャカルタ区タナアバン市場の再開発計画案が浮上している。次世代型交通システム(LRT)の路線を延伸させ、老朽化した同市場のブロックGに接続する新駅舎を建設。カキリマ(露天商)の収容先だった同ブロックの活性化を図る一方、駅前通りをカキリマに開放する案も出ている。これまで州政府の計画に踊らされてきた商人からは、新駅に期待する一方、現場の状況を踏まえた施策を望む声も上がる。
 LRT建設を担う州営建設ジャカルタ・プロペルティンド(ジャックプロ)はこのほど、LRT第2工区の北ジャカルタ区クラパ・ガディン〜中央ジャカルタ区ドゥク・アタス間を結ぶ路線を、タナアバンまで約2〜3キロ延伸する計画を明らかにした。
 タナアバンのブロックG周辺で、車両基地を建設するための用地をすでに確保したという。サンディアガ・ウノ副知事は同計画案について調査を進め、この結果を運輸省に提出する方針を示した。
 同副知事は「タナアバン市場をイスタンブールのグランド・バザールのような一大市場にしたい」と話しており、LRT駅とブロックGを結ぶことで買い物客や観光客誘致を図りたい考えだ。
■閑散とするブロックG
 タナアバン市場の中でも整備が遅れているブロックGは、近年、同地区の再開発事業の対象となってきた。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が州知事時代の2013年、渋滞の原因となっているカキリマの収容場所に指定し、建物の改修も進めた。
 ブロックGで服を売るヘルメン・ピリーさん(43)は「ジョコウィ知事は宣伝が上手かった。入り口で音楽イベントなどが催され、人が集まる新しいブロックGを見て、ブロックAから移転を決めた」と話す。
 しかし盛況だったのは数カ月のみ。4階建てのブロックGの建物には、1〜3階に計2200のキオス(売店)が入居できるが、現在埋まっているのは4割にも満たない。売店全てが閉鎖された3階では警備員1人がいるのみ。服や雑貨、食品が多いが、1、2階も閑散としている。
 商人たちは「ジョコウィ知事のやり方は間違いだった」と口をそろえる。客足が途絶えた理由として、国鉄タナアバン駅とブロックGをつなぐ歩道橋がない▽駅側の入り口にエスカレーターを設けず階段しかない▽人通りが多い駅周辺でカキリマに客を奪われている――の三つを挙げる。
 大通りを挟んで複数のブロックからなる広大な市場を、まず買い物客が心地良く行き来できるようにする。ジョコウィ知事時代に掲げられた構想に基づき、歩道は拡幅され、色とりどりのブロックも敷かれた。だが建物を結ぶはずの歩道橋は未完成のままで、ブロックGへのアクセスに大きな変化はない。
 商人の多くは閑散とするブロックGを離れ、客を求めて再び路上に戻った。首都圏鉄道網が大幅に改善され、タナアバン駅の利用者が1日11万人と急増したことも追い風となり、駅前の歩道全長約300メートルはカキリマが密集するようになった。中央ジャカルタ区によると、その数は400人以上に上る。
 就任約2カ月のジャカルタ特別州のアニス・バスウェダン知事は、タナアバン再開発の詳細について明言を避けているが、駅前通りを閉鎖してカキリマを支援する考えを表明。強制撤去や商品没収も辞さなかったアホック元知事と正反対のやり方に切り替える構えだ。
 これに対し、駅前のカキリマ商人や駅の利用者らからは「オートバイなどが通らず、安全に買い物もできる」「取り締まりにおびえなくてよい」など、賛成の声が聞かれる。
 ただ、LRT延伸案などの計画に商人たちは半信半疑だ。刺しゅう販売のジャバンさん(29)は「新しい駅ができることには賛成。タナアバンがもっとにぎやかになる。でも州政府の失敗はもうこりごり」と苦笑いした。(毛利春香、写真も)

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