KPK拘置所へ移送 電子KTP汚職 国会議長の捜査開始
汚職撲滅委員会(KPK)は19日、交通事故に遭ったとして16日に入院したスティヤ・ノファント国会議長(ゴルカル党党首)を、電子住民登録証(e—KTP)調達事業予算の不正流用事件の収賄容疑者として逮捕し、身柄をKPK本庁の拘置所に移送した。数々の大型不正事件への関与を疑われながらも、追及を免れてきたスティヤ氏が身柄を拘束されるのは初めて。
中央ジャカルタの国立チプトマングンクスモ病院のスヨノ院長は19日夜、インドネシア医師会(IDI)とともにスティヤ氏を検査した結果、入院は必要ないとする診断結果を発表した。CTスキャンやMRIなどの精密検査から心理テストなどを実施したという。
これを受け、KPKは同日午後11時半、スティヤ容疑者の身柄を南ジャカルタ区クニンガンのKPK庁舎に移動させた。
庁舎に到着した際、オレンジ色の勾留者用チョッキを身に着け、車椅子に座って移動したが、取り調べを受けた後は車椅子を使わず、報道陣の質問に答えた。
同容疑者は「事故のせいで、まだめまいがする」などと体調について説明。身柄拘束については受け入れるとしながらも、「KPKによる法的措置には抵抗する。これまで大統領や警察、最高検に法的保護を求めたほか、予備審理も請求している」と述べ、容疑無効の判決を勝ち取った前回と同様、予備審理を通じてKPKの措置に異議を申し立てたことを強調した。
KPKは20日、スティヤ容疑者の妻で、 事業資金授受の受け皿となった疑いのある企業の役員、デシスティ・アストリアニ・タゴル氏を参考人として事情聴取した。同企業はスティヤ容疑者の子どもらも役員に名を連ねている。
国会議長の捜査について、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領はスティヤ容疑者に捜査に応じるよう促している。
国会議長と党首の役職について、ゴルカル党は21日にも中央執行委員会本会議を招集し、党首代行などの人事について協議する。代行や新党首には、同容疑者側近のイドルス・マルハム幹事長やアイルランガ・ハルタルト工業相らの名前が取りざたされている。
現職の政党党首が不正関与疑惑で逮捕、訴追されるのはスティヤ氏で3人目。ユドヨノ政権下では、民主党のアナス・ウルバニングルム党首(当時)が、西ジャワ州ボゴール県のハンバラン競技場建設事業に絡む汚職事件で、自身の企業を受け皿として国営建設アディ・カルヤ幹部から車や賄賂を受領したとして、15年に禁錮14年が確定した。
また同政権で、イスラム政党の福祉正義党(PKS)のルトフィ・ハサン・イスハック党首(同)が、牛肉輸入に絡む汚職事件で13億ルピアを収賄したとして、 13年に禁錮16年が確定している。(配島克彦)