「新しいジャカルタ」実感 3人の知事の5年間

 3人の知事が率いたジャカルタ特別州の5年間が終わった。2012年10月、現職の中部ジャワ州ソロ市長だったジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)氏が就任し、スローガンに「新しいジャカルタ」を掲げた。華人のバスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)、元東ジャワ州ブリタル市長のジャロット・サイフル・ヒダヤット氏が受け継いだ。5年間の州政は、1970年代、現在のジャカルタの基盤を造ったアリ・サディキン知事に匹敵するとの評価もある一方、未着手の課題も山積している。

 ジョコウィ州政は市民の福祉とインフラ整備を同時進行させた。まず路地裏や伝統市場、洪水被災地などを回り、市民の声をくみ取りながら、同行する州政府の責任者に指示を出す。徹底した現場主義で役所の抜き打ち検査を実施し、区長や局長ら責任者の解任も辞さない。
 不満の行き場のなかった市民の喝采を受け、さらに教育、保健カード配布で低所得者支援政策を打ち出す。一方でプルイット調整池やチリウン川など、不法占拠者の撤去や露天商の移転を断行し、高層集合住宅への移転、フードコート開設など受け皿を設けた。いずれも「法順守」を盾に市民の支持を得ていった。
 インフラ整備も急ピッチで進めた。歴代知事が実行できなかった大量高速鉄道(MRT)事業を即決し、南北線の工事に着手。30年以上も買い換えられず、老朽化した公共バスの車両刷新にも取り組んだ。
 後任のアホック知事は、副知事当時から州政や行政サービスの透明性向上に指導力を発揮した。州政府の公式チャンネルをユーチューブに開設し、州庁舎で行う会議の様子を収録した動画を投稿。これまで密室で決められていた各種事業のプロセスを市民に開示することで、不正防止への取り組みをアピールしたが、同時に政敵にも攻撃材料を与えることになった。
 16年に入ると、州営病院の土地買収や、人工島造成事業を推進する華人実業家との関係などを問題視されるようになる。決定打となったのは、公式動画に収録されていた住民対話でのコーラン言及部分。これをやり玉に挙げた野党勢力はイスラム勢力を動員し、アホック氏の再選阻止に総力を結集させた。
 州民の7割がアホック州政に満足しているとの世論調査結果が相次いだが、ジョコウィ知事時代に策定した5カ年中期開発計画(RPJMD)では未着手の事業が山積する。トランスジャカルタの新路線、スンタルのごみ発電などは始動していない。1万戸を掲げた集合住宅建設のうち実現したのは6千戸にとどまる。
 16日に就任するアニス・バスウェダン次期知事は、人工島造成など一部の施策は拒否する方針を示しているが、継続可否を明確にしていない部分も多く、今後の動向が注目される。(配島克彦)

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