配車アプリ側が勝訴 運輸大臣令に違法判決 最高裁
オンライン四輪タクシーの運賃の上下限設定など、新規定を盛り込んだ運輸大臣令は中小企業法や道路交通法に違反するとして、配車アプリの運転手らが起こした行政訴訟で、最高裁判所はこのほど、大臣令は零細事業者である運転手らの利益を損なうと判断、14項目の改定を運輸相に命じた。
訴訟は、首都圏のオンラインタクシー運転手6人と弁護団が5月に起こしたもの。ブディ・カルヤ・スマディ運輸相が4月に発令した運輸大臣令(2017年26号)は中小企業法(08年20号)と道路交通法(09年22号)に違反すると主張した。
判決文によると、最高裁は、配車アプリを「情報技術の発展から生まれた共有経済のコンセプトを利用し、零細な事業者である市民(運転手)と提携することで、タクシー業を寡占から競争へと変化させた」と評価した。
運賃体系については「既存のタクシー業者と協議して設定し、共に零細、中小の事業者の成長を促していかなければならない」と指摘。大臣令で新たに設定された運賃の上限と下限を定めた条項は健全な競争に反すると判断した。
また、車両登録証(STNK)の登録名を個人から法人に変更する規定も運転手の利益に反すると指摘。運転手は零細企業同等の事業者であり、低価格の運賃で効率的なサービスを幅広い市民に提供することは事業者の権利であると認定した。違反と判断された大臣令の14項目は、11月1日までに改定しなければ法的拘束力を失う。
同大臣令は運輸大臣令(16年32号)の改正に当たり、7月1日に施行された。昨年3月、ブルーバードなど既存タクシーの運転手がオンラインタクシーを違法だと訴え、営業停止を求めて起こした大規模デモに応えたもので、オンライン四輪タクシーとの乗車運賃格差の是正を図った。両者の対立は各地で激化しており、乗客の奪い合いに絡む暴力事件も多発するなど社会問題になっている。
判決を受け、運輸省は法務人権省や専門家、インドネシア交通協会(MTI)などと協議する。ブディ運輸相は22日、「配車アプリ事業者や運転手、利用者は平静を保ってほしい。オンラインタクシーを円滑に運営するために話し合っていく」と呼びかけた。(中島昭浩)