化学製品業界に期待 BKPM日本事務所 松尾相談役に聞く
投資調整庁(BKPM)の直接投資統計によると、ことし上半期の投資額は前年同期比12.9%増の336兆7千億ルピアで、年間目標の678兆8千億ルピア達成に向けて期待がかかる。BKPM日本事務所相談役の松尾充哲さん(79)が都内でじゃかるた新聞の取材に応じ、日本の企業の進出動向など今後の展望について話した。
国別投資額では日本が2位でことしも堅調に推移しているが、昨年初めて3位に入った中国がことしも大きく数字を伸ばし迫ってきている。
三菱自動車の新工場などが稼働し、自動車関連の工場の新設は落ち着いてくるとの見方があり、松尾さんも「二輪、四輪では新規よりもすでに進出している企業の増設についての相談が多い」と話す。
他方で化学製品関係の企業の進出に期待する。花王が地場企業と合弁を設立し、リアウ州ドゥマイ市にシャンプーや洗剤、洗顔料などの原料となる脂肪酸を生産する工場の建設を進めていることに触れ、「中産階級の拡大に合わせて、消費材需要が高まる」と語る。
2016年に工場を稼働させた、大王製紙と三菱商事が出資するエリエール・インターナショナル・マニュファクチャリング・インドネシア(EIMI)やユニチャームが製造を手がける紙おむつなどを例に挙げた。
化学製品産業では瀬戸内などにも企業が広がり、今後進出が期待されるが「(企業)体力の問題などもあり、現状の案件は少ない」と話すにとどめた。
国内の工業団地については「リアウ諸島州バタムへの投資の呼び掛けは長い間行われてきているが、日系企業の進出はまだこれから」と語り、「地理的にジャカルタから遠く、シンガポールに拠点がない法人だとバタムでの展開は難しい部分はあるだろう」と分析する。
世界的に開発が進む電気自動車に対しては「現状から電気自動車生産にシフトしていくと、部品の数や内容など産業構造が大きく変わり、日本経済自体に大きな影響を及ぼすだろう。インドネシアへの影響はまだ先だが、注視する必要がある」と話す。
近年日本からの投資が伸びているベトナムについての印象を聞くと、「産業の川下から成長している印象。自動車産業も伸びしろは大きく、投資がしやすい。インドネシア当局も努力していかなければならない」と答えた。(平野慧、写真も)
◇松尾充哲氏 1961年、大阪外語大学インドネシア語学科卒。63年旭化成入社。72年現地法人を立ち上げた。99年退職後、取引先だった化繊ノズル製作所の現地法人の社長を務めるなど化学繊維畑で活躍。土地探しや社内システム作り、社員教育などにも詳しく、名古屋、大阪、東京を中心に活動。日本各地の企業から相談を受けている。