「テレグラム」過激派悪用 テロ実行指示も アプリ遮断で国家警察長官

 過激派組織が国内外の構成員との連絡用に使っているとして、通信情報省がアクセスを遮断したロシア製の通信アプリ「テレグラム」について、ティト・カルナフィアン国家警察長官は17日、過去2年間のテロで、過激派がテレグラムを使用した事例が17件あったと明らかにした。アプリの機密性が高く、自爆テロ要員勧誘やテロ実行の指令などに悪用していたことが判明している。

 ティト長官は国会第3委員会(法律)の公聴会で、テレグラム側にデータ開示を要求し、インドネシアの過激派捜査への協力を求めたが、肯定的な返答を得られず、アクセス遮断に踏み切ったと説明、「インドネシアでのテレグラム利用者は数百万に達する。利益追求の立場から、遮断されればテレグラム側も(対応を)考えるはずだ」と話した。
 ティト長官は過激派の指揮系統の変化について言及。一連の爆弾テロ事件の黒幕とされたマレーシア人、アザハリ容疑者(2005年隠れ家で射殺)の時代は、爆弾製造方法を弟子に直接伝授したが、現在は通信アプリを通じて伝えていると述べ、管理者が参加者を把握できるワッツアップなどのグループと異なり、管理者自身が匿名で不特定多数の参加者に情報を発信できるテレグラムが過激派に悪用されていると指摘した。
 テレグラムを利用した事件として、警察はサリナデパート前爆破テロ(昨年1月)、イスタナ(大統領宮殿)前の爆破未遂(同12月)、東ジャカルタ区カンプン・ムラユのバス停爆破テロ(ことし5月)、北スマトラ州警察本部襲撃(同6月)、国家警察近くのモスク襲撃(同)などを挙げている。
 ティト長官によると、シリア在住で、過激派組織イスラミック・ステート(IS)に参加しているとされるバフルン・ナイム容疑者は、政府が同容疑者のフェイスブックやツイッター、ブログを閉鎖して以来、テレグラムを通じてテロ実行の指令などを実行犯に出しており、互いに面識がなくても、テレグラムの「シークレットチャット」で連絡を取り合っているという。

■アプリ版は利用可能

 二つの端末間のシークレットチャットのメッセージは暗号化され、第三者は開封できず、設定した時間によって自動消去もできるため、捜査当局が追及しづらいとされる。また、最大1万人の不特定多数の利用者に情報を発信できる「チャンネル」機能を、バフルン容疑者が使っていたことも分かっている。
 通信情報省は17日にテレグラムのウェブサイト版(計11のドメインネーム)へのアクセスを遮断したが、同日時点でアプリは利用できる。アンドロイドの「グーグルプレイ」やアップルの「アップルストア」からダウンロードし、利用者登録なども可能な状態になっている。
 テレグラムは2015年11月のパリ同時多発テロ事件後、IS関係者が利用していたことが発覚、インドネシアの過激派も利用するようになった。
 テレグラム側はこれまでにIS関連アカウントを閉鎖し、不審なチャンネルの通報ボタンを設置するなど対策を講じてきた。テレグラム創設者・CEO(最高経営責任者)のロシア人、パーベル・ドゥロフ氏はツイッターで「インドネシア政府から正式な要請は受けていない」としているが、インドネシアの過激派によるアプリの利用状況について調査するとしている。(配島克彦)

テレグラム
 
 2013年配布開始。管理者や利用者のアカウントを公表せず使用できる。管理者がチャンネルを設置し、最大1万人にメッセージを発信できる。多機能なワッツアップやラインなどと比べてシンプルで、通信速度やセキュリティー重視をアピール。ダウンロード数は1億以上。中国は15年に遮断し、サウジアラビアやイランなどで音声通話など一部機能が規制されている。

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