【千葉から発信イスラム文化 (3)】現地化で理解促進を 日本人にも開かれた場に

 ビル購入資金約8300万円を集める「奇跡」から4カ月。ことし1月に「千葉イスラーム文化センター(CICC)」の新理事長に就任した杉本恭一郎さん(40)は「ムスリムのみならず日本人にも開かれた場として、相互理解の促進を加速させたい」と語る。ムスリムと国際結婚した家庭の子どもへのイスラム教育など、日本人が日本人にイスラムを伝える「現地化」を推進する。

 イスラム研究者の杉本理事長がムスリム留学生らの希望で募金活動に参加したのは、ビル購入資金集めが最終局面を迎えていた2016年8月。同理事長は「仏教やキリスト教では日本人が僧侶や牧師、神父になって活動している。日本人をリーダーに据えることで、活動の継続性を含めたCICCへの信頼を得られた。8千万円を超す寄付が集まったのは、留学生に先見の明があったから」と振り返る。
 CICC新設の主な目的は文化交流の場としての役割で、「礼拝・集会所だけの機能であれば他にあるので、ビルを購入しなくてもよかった」(同理事長)という。その背景には一部過激派組織のテロ行為によるムスリムへの偏見がある。
 「偏見」を助長した事件の一つは、日本人7人を含む20人が犠牲になったバングラデシュのダッカでのレストラン襲撃テロだった。杉本さんが募金活動に加わる約1カ月前の16年7月に起き、過激派組織イスラミック・ステート(IS)が犯行声明を出した。
 この直後、静岡ムスリム協会には「ISもおまえたちも同じイスラム教だろう」などと誹謗(ひぼう)中傷する内容の手紙が届いた。埼玉では礼拝施設に投石する事件も起き、日本でもムスリムへの風向きが良いとは言いがたい。
 杉本理事長は「バングラデシュ政府は国内にISがいると認めていないにもかかわらず、報道を通して『過激なイスラムのテロ』という言葉が一人歩きしている」と指摘。
 「イスラムやムスリムについて、日本人が日常的に抱いている質問に向かい合い、無用な対立を防止することが今、求められている。日本語の分かるムスリムが、説法者の理解度、正統性を判断するため、日本人がイスラムを教えても問題ない」とセンター設置の意義を説明した。(つづく)(中島昭浩、写真も)

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