【アルンアルン】統一地方首長選挙の意味

 注目のジャカルタ特別州知事選挙が2日後に迫っている。
 現職知事のバスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)、陸軍出身で前大統領の長男アグス・ハリムルティ・ユドヨノ、大学教授で前文化・初中等教育相のアニス・バスウェダンの3組が、ほぼ横並びの激しい選挙戦を繰り広げている。おそらく、2月15日の投票で過半数を得票できる候補は出ないだろう。そのため、最終決着は上位2組の候補による4月19日の決選投票まで持ち越される。
 振り返れば、選挙戦が始まる前の段階では、現職のアホックが圧倒的に優位な立場にいた。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領と同様に、市民ボランティアの強い支援を受けたことに加え、闘争民主党とゴルカル党の2大政党の支持も得て、態勢は盤石のはずであった。
 ところが、昨年9月に宗教的な失言をしたことがきっかけとなって、アホックはイスラム保守派による激しい攻撃にさらされ、一気に形勢は逆転してしまった。
 宗教冒とくだという批判がどれだけ合理的であるかは別にして、華人かつキリスト教徒という自らの出自を考えれば、アホックの発言は軽率であった。前回、ジョコウィと彼が立候補した2012年の選挙でも、対立候補から宗教や民族といった社会的属性に基づいた批判を浴びせられたことを思い出すべきだった。
 しかも、副知事候補だった前回とは違い、今回は自らが批判の矢面に立たされる知事候補という立場である。さらに、ジョコウィが州知事から大統領へと政界の階段を駆け上がったため、ジャカルタ知事は将来の大統領職を狙えるポストとして注目度が急上昇したことも、選挙戦がヒートアップした原因である。
 しかし、このような逆風の中でもアホックが最終盤まで健闘していることは評価されていい。また、他の2組の候補が社会的属性に基づいた攻撃を表立っては控えているところにも、光明が見出される。
 ジャカルタ知事選ばかりが注目されているが、15日にはこの他に六つの州知事選、18の市長選、76の県知事選が同時に実施される。ジャカルタ以外でも、例えば、かつて分離独立運動を展開していたゲリラ指導者らが4組に分かれて立候補しているアチェ州知事選は、注目の選挙である。また、ハサン一族による支配体制が州知事の汚職容疑での逮捕によって崩壊するかに思われたバンテン州の知事選に、再びハサン一族の人物が立候補しているのも興味深い。
 統一地方首長選挙が実施されるのは、2年前に続いて2度目である。05年に初めて地方首長に対する住民の直接選挙が導入されて以来、各地方の首長選は任期の切れた自治体ごとにばらばらに実施されてきた。
 しかし、それではあまりに非効率だということで、15年から任期満了の時期が近い自治体ごとに段階的に選挙の実施を統合していくことになったのである。最終的に全ての自治体の首長選挙が同日に統一されるのは2027年とされている。
 過去の地方首長選挙では、広範な有権者の支持を獲得するため異なる社会的出自の政治家が組んで立候補することも多く、宗教や民族といった社会的分断を抑制する機能を果たしてきた。
 首都での混乱を乗り越え、地方首長選挙が社会を統合する機能を今後も果たし続けられるのかどうかが問われている。(JETROアジア経済研究所・川村晃一)

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