CSRで住民支援 バタン発電所 工事本格化 小口融資・雇用創出

 周辺住民の反対で建設が遅れていた中部ジャワ州バタンの石炭火力発電所(出力計2千メガワット=MW)の整地作業が終わり、近日くい打ち工事などの基礎工事に入る。4年近く延期してきた工事が本格化する。 

 南ジャカルタのビダカラホテルで14日に行われた産業促進イベント「ベスト電力アワード」の授賞式で、バタンの石炭火力発電所を進めるビマセナ・パワー・インドネシア社が、環境に配慮して事業活動を続けてきた企業に与えられる賞を受賞した。受賞に対し、同社の入江高志社長は「住民との対話を心がけ、自立を支援してきた結果」と振り返った。
 バタン発電所は、Jパワーと伊藤忠商事、地場系石炭開発のアダロ・エナジーが出資し、総額42億ドルで建設する東南アジア最大級の石炭火力発電所。官民パートナーシップ方式(PPP)による初の案件として日イ両政府による首脳会談で常に議題に挙げられてきた。
 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は将来的に国内の電力が逼迫(ひっぱく)する背景を懸念し、同案件を重要視。昨年8月に現地を視察、建設の加速化を指示してきた。
 当初計画では2012年着工、16年末に1号機の稼働を予定していたが、一部住民や国際NGOのグリーンピースら環境保護団体などが「建設により住民の人権がないがしろにされる」などと反対運動を続け、用地収用が大幅に遅れていた。ことし5月にもイスタナ(大統領宮殿)前で数千人規模のデモ抗議があった。
 このような状況に対し、ビマセナ・パワー・インドネシアは「精力的に社会的責任(CSR)活動に取り組んできた」と強調。3村の住民を対象に実施した低所得者層向けの小口融資(マイクロファイナンス)や雇用創出に向けた研修制度の充実を図った。織物業や畜産業、漁業従事者などを対象に行ってきた活動は2千人規模に上った。
 地権者だけでなく農業従事者への配慮や、用地収用で一時的に雇用を失った住民に土木工事や整地作業などの雇用機会も提供した。13年からは村の診療所に食料や器具を配布。インフラ整備では15年末までに42カ所にモスクを建設、CSRは多岐にわたった。
 融資を主導する国際協力銀行(JBIC)との融資契約締結後のことし6月に着工し、現在整地作業を終えた。ビマセナの入江社長は「2020年の運営開始に向けて順調に進められている」と期待を込める。
 一時は数千人規模のデモや、中央ジャカルタの在インドネシア日本大使館前での抗議活動が行われていたが、「理解を得られ、現在反対住民は数えられる人数と認識している」(入江社長)。
 グリーンピース・インドネシアのアリフ・フィヤント氏によると、現在も漁民を中心にデモ抗議が行われているという。(佐藤拓也、写真も)

日イ関係 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly