【貿易風】ジャカルタ州知事選の見方

 来年2月に予定されているジャカルタ州知事選の候補者がようやく出そろった。選挙までまだ相当の時間があるが、立候補締め切り当日の23日早朝までドタバタが続いた。
 まず21日に、州議会最大会派の闘争民主党(PDIP)が現職のアホック支持を発表した。PDIPはそれまでスラバヤ市長トリ・リスマハリニ(リスマ)の擁立も検討していたが、2018年の東ジャワ州知事選の有力候補でもあるリスマのカードを切るリスクを回避した。
 それ以前にアホック支持を表明していた3政党以外は、対立候補の擁立を直前まで模索した。最終的に、民主党などが軍人でユドヨノ前大統領の息子アグス・ハリムルティ・ユドヨノと州官僚のシルフィアナ・ムルニを、グリンドラ党と福祉正義党(PKS)はアニス・バスウェダン前教育文化相と実業家のサンディアガ・ウノのペアを、それぞれ推すことになった。
 候補者擁立の過程を踏まえて、この選挙の見方をいくつか示したい。
 まず、世論調査の影響力である。候補者選びが最後になって熱を帯びたのは、アホックの支持率が下落傾向で、組み合わせによっては選挙に負ける可能性も示されたからであった。そこで、共に著名人のアニスとサンディアガのコンビが誕生した。
 3組の候補者全員が政党におけるキャリアがほぼ皆無であることも特徴的である。アグス・ユドヨノについては未知数だが、04年に大統領選挙に勝利した父親同様、これからの宣伝いかんで人気が急上昇する可能性はある。
 次に、宗教と民族集団(エスニシティ)の色が薄いことである。華人でキリスト教徒のアホックに対しては、イスラム色の強い候補をぶつけることがまず考えられたはずである。しかし実際の候補者となったのは、宗教色が比較的弱い、いずれも若年の中間層にうけそうな著名人ばかりであった。選挙戦略としては賢明であろう。
 ジョコウィとアホックが正副知事に選ばれた12年選挙では、地元のブタウィ人ペアとの事実上の一騎打ちであった。しかし今回、ブタウィ人は、一般にはほとんど知られていないシルフィアナだけだった。もっとも、選挙本番となれば、宗教やエスニシティを使ったアホックに対する攻撃が増えるだろう。
 最後に、候補者選びを最終的に決したのは、メガワティ、ユドヨノの元大統領、そしてプラボウォの3人だったということである。いずれも政党の党首であるが、政党という組織よりも指導者個人の政治力が重要であった。アホックは、PDIPなしでも立候補できたが、メガワティほか党幹部の批判と要求を受け入れ、推薦を得た。
 当初独立候補としての立候補も模索したアホックの主要政党への妥協は19年、あるいはその次の大統領選への布石とみることもできる。今後の政局を占ううえでも、目が離せない選挙になるだろう。(見市建=岩手県立大学総合政策学部准教授)

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