【石油マフィア】(下) 低質原油ザタピの呪縛 輸入に介在する星の会社 (2014年09月10日)

Share (facebook)
このエントリーをはてなブックマークに追加 LINEで送る

 2008年2月、低品質原油ザタピの輸入がまな板に上がった。国会エネルギー委員会がプルノモ・エネルギー鉱物資源相との会談で、国営石油プルタミナが石油会社ゴールドメイナー・インターナショナル(シンガポール)から原油ザタピ60万バレルを購入した取引でカルテル(談合)があったと非難した。議員団はザタピの「とても高い購入価格」を隠していたと、プルタミナも共謀した疑いを指摘した。
 週刊誌テンポなどの当時の報道では、ザタピはスーダン(現南スーダン)産低品質原油「ダルブレンド」を主とし、豪州産「NWSC」「ステイバロウ」を混ぜたもの。とても低品質といわれた。
 同年4月、プルタミナを管轄する国営企業省のサイド事務次官は「カルテルで入札価格が安くならなかった」と指摘。同省はザタピ輸入案件を監査にかける方針を示した。
 同年9月、プルタミナのアリ・スマルノ社長は国会の公聴会で「輸入でプルタミナは500万ドルを節約できた。損失はない。むしろ利益がある」と疑念を否定した。
 同年10月に国家警察刑事局汚職三課はプルタミナの社屋を家宅捜査の末、ゴールドのスヒレル社長とプルタミナ社員4人を官製談合の容疑者に認定した。ザタピの質が価格5400万ドルに見合わないと知りながら購入した経緯の捜査が本格化したかに見えた。

■捜査はつぶされたのか
 だが、捜査は停滞する。スヒレル社長は翌月、心臓の病のためシンガポールの病院に入院。聴取に同国捜査当局の許可が必要になった。刑事局の請求から2カ月後にシンガポールは自国の捜査当局が聴取し、内容をイ刑事局に渡すという条件を提示。検察が書類送検の条件として求めた、国家損失額の算定も会計監査機関で停まった。
 同年9月に国家警察長官を退任したスタント氏が09年1月、プルタミナの理事長に天下る。直後の1月8日、プルノモ・エネルギー相と会談し、捜査の進展を見守ると説明した。故スハルト元大統領の秘書だったスタント氏は現在、プラボウォ氏の選挙戦を民法テレビ3局で支援したMNCグループの独立監査役だ。
 10年2月、後任のバンバン国家警察長官は「国家損失は存在しなかった」と捜査を打ち切った。プルノモ・エネルギー相は09年10月からのユドヨノ政権2期で防衛相に横滑りした。

■質の悪い「プレミウム」
 プルタミナはザタピなどを年間2億バレル輸入しているとみられる。プルタミナは国営企業にもかかわらず、燃料輸入の詳細を開示していない。08年〜09年当時問題化した60万バレルはとても小さなかけらだった可能性がある。
 大統領選投票の3日前の7月6日、元業界関係者を含む市民団体「ザタピ事件捜査打ち切り連合」のデモは、ザタピなどのアフリカ・中東産の低品質原油をシンガポールなどで精製し、その後適正価格より高い価格でプルタミナが買うスキームを指摘した。この輸入には、プルタミナ子会社の商社ペトラルや、シンガポール登記の石油会社が少なくとも5社絡んでいるとの証言や分析が、学者や石油産業の関係者から出ている。
 補助金付きレギュラーガソリン「プレミウム」は質が悪い。特に補助金付き軽油「ソラール」の硫黄分は3500PPMでシンガポールの軽油の350倍。
 環境国務相事務所は今年5月、ジャカルタの大気汚染の原因として精製度の低いガソリンを挙げた。(吉田拓史、おわり)

☆関連記事
【石油マフィア】(中) 石油精製阻む高い壁 カレン社長辞職の背景 (2014年09月09日)

このカテゴリの最新記事

本日のニュース一覧