ASEANに一体性を 海洋進出の中国をけん制 日イ首脳会談
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などに出席するため、バリ州ヌサドゥアを訪れている安倍首相は7日、ユドヨノ大統領と約20分間会談した。安倍首相は海洋進出を活発化させる中国を念頭に、「力による現状変更の動きを懸念している」とけん制。9日からブルネイで始まり、両氏や中国首脳も出席する東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会談を前に、ASEAN加盟国が足並みをそろえる必要性を訴えた。
中国は、ASEAN関連首脳会議を前に、領有権問題で特に対立するフィリピンを除いたASEAN主要国との間で首脳の往来を活発化させるなど、ASEANの分断を狙うような動きを見せている。安倍首相は会談で、「ASEANが一体となった有意義な議論ができるよう、共に(議長国の)ブルネイを支援していこう」と呼び掛けた。ユドヨノ大統領は「紛争解決のための軍事力の行使は回避しなければならない」として、「日本とインドネシアは同じ立場にある」と述べた。
さらに安倍首相は、先月下旬の国連総会での演説で取り上げた「積極的平和主義」について「地域、国際社会の平和と安定に今まで以上に積極的に貢献していく」と説明した。外交・安保の司令塔として設置を目指す国家安全保障会議(日本版NSC)や安保の基本方針となる国家安全保障戦略の策定などの取り組みを進めていることに触れた上で、「平和国家としての根幹は不変である」と強調。方針を関係国に丁寧に説明していく考えも伝えた。
ユドヨノ大統領は、インドネシア中銀と日銀が二国間為替スワップ協定(BSA)の最大調達額を倍増させる方向で協議を進めていることを「前進があったことは、非常に有効だ」と評価。安倍首相も協議の進展を歓迎し、貿易投資やインフラ整備でさらに協力を進めていく方針を示した。
安倍首相は第2次政権発足後の1月にジャカルタを訪問したほか、ロシア・サンクトペテルブルクで先月開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議でも首脳会談を実施している。
安倍首相は同日、ロシアのプーチン大統領やベトナムのチュオン・タン・サン国家主席とも個別に会談。プーチン大統領との間では、北方領土交渉の進展に向けて協議を続ける方針で一致し、タン国家主席に対しては、原発を含むインフラ整備を支援していく考えを示した。(バリ州ヌサドゥアで道下健弘)